フィンランドは、1917年12月6日にロシア帝国からの独立を宣言しました。よって、フィンランドではこの日を「独立記念日」と定め、毎年にぎやかにお祝いします。とはいえ、国家としてちゃんと認めてもらおうと思えば、ただ一方的に独立を宣言しただけでは不十分です。世界の各国がその独立を認め、外交関係が樹立されてはじめて「国家」の仲間入りをはたすことができるのです。
日本が、独立国家としてフィンランドを承認したのは1919年5月23日のことでした。つまり、ことし2019年は日本とフィンランドとのあいだに外交関係が築かれてからちょうど100周年のメモリアルイヤーにあたるのです。そしてその「100周年」をお祝いして、先日4月14日に駐日フィンランド大使館では「Feel Finland」というお祭りが開催され、moiも大使館よりお声かけいただきイベントに参加させていただきました!
じつは、これまでにも北欧関連のイベント等への出店についてお声かけをいただくことは幾度もあったのですが、マンパワーはじめさまざまな物理的条件からかならずしもご要望に応えることができませんでした。が、しかし、フィンランド好きの日本人として、こんなメモリアルイヤーに居合わせ、しかも微力ながら関わることができるという〝幸運〟をさすがに逃すわけにはいかないということで、万難を排して参加させていただくことにした次第です。以下、当日のレポートです。
早朝7時に集合したぼくらは、当日手伝ってくれる原田くんの車でまずは吉祥寺へ、荷物をピックアップして一路フィンランド大使館をめざします。心配していた渋滞に巻き込まれることもなく、予定よりも早い8時半には無事現地に到着することができました。だいたいイベントには予期せぬアクシデントがつきもの、早いに越したことありません。
ところで、駐日フィンランド大使館は港区南麻布、有栖川公園にほどちかい世界各地の大使館が立ち並ぶ閑静なエリアの一角にあります。
初代フィンランド代理公使を務めたグスタフ・ヨン・ラムステットの回想によれば、大使館ははじめ築地の精養軒ホテルにしばらく置かれた後、アルゼンチン大使館が使っていた建物をみつけ腰を落ち着けます。当時を振り返ってラムステットは、アルゼンチンの国旗に合わせて旗台が青と白に塗り分けられていたためそのまま塗り直すことなく使用できたと冗談まじりに書いていますが、生まれたばかりの小国に潤沢な資金があるはずもなく、きっと経済面では苦労が絶えなかったのではないでしょうか。大使館は、その後1980年ごろに南麻布のこの地に移転、現在に至ります。
会場をぐるっと見回すと、大使館の建物を背にステージが設えられ、さらに中庭を囲むようにたくさんのテントが並んでいます。大使館のスタッフも、みな緊張した面持ちで忙しそうに立ち働いています。一方、それぞれのテントでは、出展者たちによる準備が着々と進められているところ。
今回の出展者は、Scandex、Novita、Arco Design、Biotope、Hukka Design、Härkis、Moomin stand、Arnolds、Lilla Dalarna、Kyrö、The Helsinki Distilling、そしてmoi & kielotie (順不同)という顔ぶれでした。
じつは、今回のお話をいただいたとき、せっかくなのでなにかお祭りっぽい仕掛けをしたいと思い、近くにいながらふだんなかなか一緒になる機会の少ない荻窪にあるふたつのフィンランドカフェ、istutさんとkielotieさんに「中央線フィンカフェ3兄弟」として一緒にひとつのテントで出店しませんか? とお誘いしました。istutさんは、あいにくちょうどこの時期買い付けのため日本を留守にしているということで叶いませんでしたが、kielotieさんには快諾していただき、今回は「moi」と「kielotie」との記念すべき(?)コラボ出店となりました。
メニューは、kielotieさんがサーモンスープ、マッカラ (ソーセージ)、フィンランドのビールなど、そしてmoiがコーヒー、シナモンロール、ピパルカック(アアルトの花瓶をかたどったジンジャークッキー)、そしてこの日のために中田ベーカリーさんにつくってもらったディルのパン(Tillileipä)をご用意、ひとつのテントで販売しました(下の写真はmoiで用意したメニュー)。
また、kielotieの新川さんによるデザインでWネームの記念Tシャツも限定販売しました! 普段着としても着られる白地に青と濃紺に白の2色展開。まだ少し在庫があるので興味のある方はお問い合わせください!!
今回、この「Feel Finland」に入場できるのは招待客ふくめ1,300人あまり。一般の方々はWEBからの事前登録が必要だったのですが、なんと1,200人の枠が登録開始後半日ほどで満員になってしまうという盛況ぶりでした。そんないわば「勝ち組」のみなさんが、正門からどっと押し寄せてくる様子はなかなかのド迫力。そこから、14時すぎくらいまでのことはほとんど記憶にありません…………
上の写真は、ひたすらコーヒーを淹れつづける岩間。
昼ごろにはシナモンロール、そしてディルのパン、クッキーと順次完売していきます。そしてなんと、15時すぎにはまさかのコーヒーまで完売になってしまいました。購入できなかったお客様、ほんとうにゴメンナサイ!
ちなみに、コーヒーはこの日の「お祭り」に合わせて、北欧風の爽やかで軽い味わいのものをグラウベルコーヒーさんにセレクトしていただきました。豆は「エチオピア シャキッソ ナチュラルプロセス」の中浅煎りで、2017年に六本木ミッドタウンの21_21DESIGN SIGHTで行われたイベント「FIN/100」でトークイベントをさせていただいた折、お客様にご好評いただいたのと同じものです。興味のある方はグラウベルさんにお問い合わせください。
そんな感じで、ぼくが顔をあげる余裕すらなくひたすら下を向いてコーヒーを淹れつづけているあいだにも、どうやらステージではさまざまなパフォーマンスが繰り広げられていたようです。
他にも、エアギターのパフォマーンスや詩の朗読、モダンダンス、それにイスケルマと呼ばれるフィンランド特有の「タンゴ」の生演奏などが続きます。下は、民族衣裳によるフォークダンスの披露。会場内がのどかな雰囲気に包まれていました。
また、フィンランドで人気のシンガー、アイザック・エリオットのアコースティックミニライブもありました。フィンランドでは「Ikke(イッケ)」という愛称でアイドル的な人気を誇るシンガーです。なんでもSpotifyの再生回数1億回とのこと。自然にカラダが動く気持ちいライブパフォーマンスを繰り広げていました。
ちなみに、事前登録制とはいえ、フィンランド大使館を一般公開するのはこれが初めてとのこと。ぼくの予想では、つぎはきっと100年後だと思います。
ところで、この外交関係樹立100周年にあたってフィンランドとゆかりの深い6人の著名人が「親善大使」に任命されました。「親善大使」は、照明デザイナーの石井幹子、スキージャンプの葛西紀明、女優の小林聡美、ピアニストの舘野泉、アイドルの藤咲彩音、そしてデザイナーの皆川明といった面々(敬略称・順不同)、
会場には、ゲストとして「親善大使」の方もいらっしゃっていました。下は、でんぱ組inc.のピンキーこと藤咲彩音さんのツイッターより。
その他にも、大使館の館内ではヒンメリづくり、フラワーアレンジメントといったワークショップ、サウナ体験、フィンランド人シェフによる創作料理の試食などがおこなわれていたようですが、、、テントに張り付いていたためまったく分かりません!!!
そうして「お祭り」は、来場者全員を巻き込んだフィンランド生まれのフォークダンス「Letkiss(日本では「レッツ・キス」でおなじみのあれ)」で大団円へ。せっかくなのでぼくも参加してみましたが、6時間あまり切れ目なしにコーヒーを淹れつづけた疲れとウン十年ぶりのフォークダンスは想像以上にハードで、華麗に踊るつもりが「加齢」でただドタドタのドタに終始しました。いつかリベンジしたいと思います?!
宴の終わりに………… 風にはためくフィンランド国旗を眺めつつ、さらに100年後、日本とフィンランドとはどんなふうになっているのだろうなどとぼんやり考えていました。ていうか、ほぼ放心状態。
最後に、当日ご来場いただきましたみなさん、ありがとうございました! ゆっくりお話しでもと思ってましたが、とてもそんな余裕もなく失礼しました。
そして今回コラボレーションしていただいた「kielotie」の新川ご夫妻、そしてスタッフのみなさんもおつかれさまでした。同じ釜のメシならぬ、同じテントでメシを売った者同士これからも仲良くしてください。
また、朝早くからパンを焼いてくださった中田ベーカリーさん、WILLcafeの来栖さん、グラウベルコーヒーの狩野さん、大変お世話になりました。当日に至るまで、煩雑なやりとりをしていただいたフィンランド大使館商務部スタッフのみなさまもありがとうございました。
さらに、ヘルプ要員としてかけつけてくれた元スタッフ、離れたキッチンまで7リットルの水をもらいに7、8往復するかたわら、ここに掲載したほとんどの写真も撮影してくれた原田くん、大活躍ご苦労さまでした!!! その後、目を合わせてくれないような気がするのはこちらの思い過ごしだとよいのですが…………。
いずれにせよ、これからも日本とフィンランドとをつなぐちいさな「絆」をそこかしこに、いろいろなかたちでつくっていければと思った1日でした。
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